嘘日記#6

 僕の今までの人生は、君と出会う為の前フリなんだと思った。 何もかも全部君と出会う為の前フリで、開演前の前説であって、落語でいう枕である。君に出会うまでの人生は乱数調整にしか過ぎないのだ。 これから、僕は有り余るほどの幸福と、僅かばかりの不幸を享受し、真っ当に生きていくんだと、君と出会って思った。 僕がそう思ってることもつゆ知らず、君は二度寝をしている。教会で聴いた讃美歌のような寝息を、mp3に焼き付けるかのように、大切に、一つも溢さぬよう聞き耳を立てている。被さるように降る雨音も、パラレルワールドの僕が流している涙かのように、地面に打ちつけている。ポジティブな涙か、ネガティブな涙か、決めつけることすら馬鹿らしくなるほど神聖な水。 これから神様に祈る時、君の顔を思い浮かべていくんだ。両足に付いていた足枷が、段々と縮小し、地面と同化するような、はたまた、背中から空想上の生物のような羽が生え、どこにだっていけるような、そんな全能感を君はくれた。理性主義の時代を終わらせてしまうほど、君の存在は偉大で、どうしても神格化してしまう。色々と背負わせて、ごめんね。そう呟く僕の横で君はまだ眠っている。

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