嘘日記#1

今朝、飼っていたクチパッチが死んだ。

唇が紫色に変色していたので、すぐに死んでいると分かった。

どうしたものかと考え、とりあえずグーグルで検索してみるも、思ってた答えは載っていなかった。

とりあえず、昨日の晩ご飯を買った時に貰ったスーパーの袋に慎重に詰め、冷凍庫に入れた。安らかに眠ってくれと心から祈った。時計に目をやる。時刻は7:30を指しており、家を出るまで後30分しかない。とりあえず、カーテンを開け、空を眺める。

ここで一句。

「朝靄が 私の心を 照らしてる」

モーニングルーティンの詠みものを終わらせ、タバコに火をつける。最近は、鼻の穴からタバコを吸うのにハマっている。昨日、駅前の喫煙所で鼻からタバコを摂取していると、警察官がわらわらと出てきて面白かった。馬鹿でかい声で、ポエトリーリーディングをしたら、勝手にどっかに行ってくれた。ラッキー。

時間がないと言うものの、やるべきことはタバコと俳句だけである。2024年に入ってからは、歯を磨くことも、顔を洗うこともやめた。これが、合理化、効率化と言うものだ。寝る時にもう、スーツを着て寝ている。何度も言う、これが合理的かつ効率的であるからだ。

リュックを背負い、靴を履く。玄関のドアに手をかけた時、ふとクチパッチのことが脳裏に浮かび、土足のまま、冷凍庫に向かった。何も考えず、クチパッチをポケットに入れた。

ひんやりとした感覚が肌に伝わると同時に、クチパッチの死を重く感じた。

玄関を出ると、運よく大型トラックが信号待ちをしていた。私は、トラックの荷台を掴み、スケボーに乗った。最近は、節約と体力温存を兼ねて、カルガモ走法で通勤している。道路の舗装が悪く、重心が不安定になる。クチパッチが落ちないよう、ポケットに手を入れた。段々と、人肌くらいの体温に戻ってきた、クチパッチから、沢庵みたいな異臭が放たれ、私は鼻をつまんだ。私は、叫ぶ。

「ドナー登録したけど、その時には私はもう死んでいて、どうやって感謝されたらいいんだ!」

クチパッチ「知るかあ!」

私は酷く動揺した。死んだはずのクチパッチが喋ったのである。

気が付くと私はポケットからクチパッチを取り出し、木星にめがけ放り投げた。

重力を無視したクチパッチが天に吸い上げられていく。

バイキンマンのように、ピカーんと音を鳴らし、空の彼方へ消えていった。

あまりの速さに音が遅れてやってくる。

クチパッチ「お前ドナー登録拒否してるくせに、そんな心配すんな!」

時刻は8:12を指していた。

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